第14級の後遺障害で後遺障害保険金75万円の外に690万を取得して訴訟上の和解
(2018年11月7日解決)
依頼者A(42歳の女性、主婦)は、自家用車を運転していたところ、前方にある押しボタン式の信号機が青色を表示していたので時速30キロメートルの速度で前進した。
そうしたところから右方からB運転の車両が一時停止の道路標識を無視して時速40キロメートル位の速度で前進してきたため、B車両の前部がA車両の運転席側に衝突し、A車両は横転した。
この事故により、Aは全身打撲、頚部捻挫、背部挫傷、前胸部挫傷、外傷性ストレス障害等の傷害を負った。
Aは6日間C病院に入院し、その他、D病院、E病院を含め約2年間の間通院した。
このように通院が長期化したのは、AにPTSDの症状があらわれ、フラッシュバックのような状態になったからである。
Bは、当初、Aが赤信号を無視して走行したなどと述べ、その後も誠意ある態度をみせなかった。
Aの後遺障害について、静岡自賠責損害調査事務所は、むち打ち症だけの第14級9号(局部に神経症状を残すもの)しか認定しなかったので、AはBを被告として静岡地方裁判所に損害賠償請求の訴を提起した。
裁判官が鑑定を採用しないので、AはC病院の主治医(脳神経外科、精神科)の意見書を提出し、少なくとも12級相当にはなるとの立証をしたが、裁判官の12級との心証を固めることができなかった。
Aの本人尋問終了後、裁判官から和解案がA、B双方に示された。
それによると、非器質性精神障害については、就労にあたり、かなりの配慮が必要などといった12級になる程度にまでは至っていない、末梢神経症状についても、ヘルニア所見自体は変性変化によるものであり、他覚的所見による裏づけがあるとはいえないとして、後遺障害の程度は14級と判断した。
しかし、本件事故の態様、カルテの記載、Aの尋問時点の症状を踏まえると、等級及び喪失率は14級と評価しつつ、主婦としての労働能力喪失期間は5年ではなく7年とした。
そして、Aの過失を10パーセントとして、後遺障害保険金75万円を控除し、人損として690万円の和解額が提示された。
この他に物損として、BはAに対し、173万円を支払えという和解額も提示された。
AとBの加入している自動車任意保険F損害保険会社はこの和解案を受諾し、訴訟上の和解が成立したものである。
本件は裁判官も12級にしようかと迷った事案ではあったが、静岡自賠責損害調査事務所の認定から自由ではなかったものである。
それでは鑑定を採用すればよいものと思うが、静岡地方裁判所本庁の現在の民事裁判官は鑑定を採用しない傾向が顕著である。
被害者側弁護士にとっては、現在、なかなか厳しい冬の状況になっているが、めげることなく、もっと頑張らなければいけないと思った。