(2015年6月19日解決)
依頼者A(72才の女性、パートタイマー)は、長女Bの運転する車両の助手席に同乗中、C運転の車両に追突された。
その結果、Aは頚椎捻挫の傷害を負い、頚部から肩甲部にかけての疼痛と左手指にしびれが残存した。
Aが当事務所を代理人として、自賠責会社Dに後遺障害についての被害者請求をしたところ、静岡自賠責損害調査事務所は、「頚椎捻挫後の頚部痛等の症状については、提出の画像上、知覚障害なし、反射正常とされており、自覚症状を裏づける客観的な医学的所見に乏しいことに加え、その他症状経過、治療状況等も勘案した結果、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難いことから、自賠責保険における後遺障害には該当しない。」との判断をした。
当事務所はAの頚椎MRIには明らかな椎間板の変性、膨隆、突出が認められ、痛みの神経の分布している硬膜嚢を圧迫していることから、Aに後遺障害はある旨の意見書を付して異議の申立てをした。
静岡自賠責損害調査事務所は、主治医のE医師に医療照会をしたところ、Aの頚部痛の症状は、現在も消退することなく残存し、将来においても回復が困難と認められるから、局部に神経症状を残すものとして、Aの後遺障害を第14級9号であると判断した。
Aはこの結果を受け入れることとし、Cの加入している自動車任意保険F損害保険会社と交渉することにした。
F損保は、Aの治療費として42万円、休業損害として33万円、傷害の慰謝料として70万円、後遺障害の逸失利益として64万円(喪失期間を5年間、基礎収入を295万6000円、喪失率5パーセント)、後遺障害の慰謝料として110万円の計320万円程度を提示したのでCはこれを受諾し、訴訟外の和解をしたものである。
本件は頚椎MRIの所見をもとに異議の申立てをしたことが第14級9号に認定されることにつながったものである。
最近では、第14級9号の認定もなかなか厳しくなっており、MRIの画像上ヘルニアの症状がはっきりとあらわれているにもかかわらず、第12級13号が認定されることはまずない。
静岡自賠責調査事務所の調査方法に対し、国民からの批判が必要な時期が到来しているものと思われる。
この調査結果が1人歩きをし、裁判官もこの結果を尊重している現実があるので、そのことは被害者専門の弁護士にとっては緊急課題である。