第14級の後遺障害で労働能力喪失期間を10年として訴訟上の和解

(2014年11月20日解決)
 

本件は、会社員の男性A(34歳)の運転する車両がBの運転する車両に追突され、Aが頚椎捻挫を負った、いわゆるむち打ち症の事案である。

Bの加入している自動車任意共済 C共済はAの後遺障害につき、静岡自賠責損害調査事務所に事前認定をしたところ、同事務所は、Aの後遺障害の等級を第14級9号(局部に神経症状を残すもの)と判断した。
 

C共済は第14級9号を前提として、Aの損害を算定し、Aに対し、治療費としての既払金136万円を除き、その余の損害賠償額として186万円を提示した。
 

Aは、この額が妥当であるか否かを当事務所に相談した。


当事務所は、Aの左腕と手指にしびれが残存し、頚椎MRIの画像上も神経根の障害を疑わせる症状があるので、Aが弁護士費用特約付保険に加入していたこともあり、Aの後遺障害の程度を第12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)だとし、静岡地方裁判所沼津支部に損害賠償請求の訴を提起した。


Aは鑑定の申立てをしたが、まず、Aの主治医から意見を出して欲しいとのことで、最終的には鑑定採用をしなかった。


Aの主治医は、はっきりとした見解を述べず、裁判官はAに神経根の障害を疑わせるしびれの症状があると認めたものの、それはAの素因により発生していることも否定できないとして、Aの後遺障害を14級と認定するとの考えを示した。


しかし、しびれ等によるAの後遺障害も否定できないので、労働能力喪失期間を12級のむち打ち症の場合の10年間とし、既払金を除きBがAに対し、580万円を支払うよう和解案を提示した。


Aは12級に認定されないことに不満ではあったが、Cの当初の提示額よりも約400万円増額となったので、これを受諾し、訴訟上の和解をしたものである。


現在、鑑定を採用しない裁判官が静岡地方裁判所でも増加しており、被害者専門の弁護士としては頭の痛いところである。


鑑定も事実を認定する上での有力な手段であるので、被害者が申立てる限り、採用すべきではないかと考える。


鑑定が採用されない場合、裁判官は静岡自賠責損害調査事務所の調査結果を尊重する傾向にあるので、今後、裁判官に対する説得をどのようにしたらよいか工夫を要する。


いずれにしても悩ましいところである。


なお、交通事故被害者は主治医と日常的に意思疎通をし、自分の症状を把握してもらう必要があり、それがないと後に主治医はあいまいな回答をし、それが被害者の不利益に働くものであるので注意が必要である。本件の場合、まさしくそのとおりであった。


 

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