(2017.4.18判決)
依頼者A(18歳の女性、無職)は、父Bの運転する車両の後部座席に乗車し直進していたところ、路外の駐車場からC運転の車両が飛び出してきて、B車両の左側に衝突した。Aは、この衝撃により左から右へ身体が動き、頭部打撲、左肩関節捻挫、外傷性頚部症候群の傷害を負った。
Aの父Bは、Aがしびれと痛みを訴え、Aの症状の回復が遅れているので、多数の開業医にAの症状をみせたが、理解してくれる医師はなく、さらに、Cの加入している自動車任意保険 D損害保険会社も6か月で治療費を打ち切ったため、AとBは二進も三進もいかなくなってしまった。
Aの父Bは、遠方に住んでいたところ、ホームページで当事務所を知り、相談に来た。
Aは、まず静岡地方裁判所浜松支部に訴訟を提起し、その後、当事務所の勧めた静岡市内のE病院で頚椎のMRIを撮影してもらった。
その上で、過去に静岡地方裁判所で鑑定医をしていたF医師(京都府内の公立病院院長、整形外科医)にAを診断してもらい医学意見書を得た。
それによると、C5/6、C6/7椎間板にヘルニアがあり、Aが事故当時18歳という年齢であるので加齢によるものであることは考えにくく、ヘルニアの存在は本件事故と因果関係があるというものであった。
当事務所は裁判と並行して自賠責会社を通じ静岡自賠責損害調査事務所にAの後遺障害について被害者請求をしたところ、同事務所は後遺障害非該当とした。
そのために、Aは裁判で鑑定の申立てをし、裁判所は鑑定を採用した。
鑑定医の意見もF医師の意見と同様であった。
裁判官は、A、C双方に和解案を提示したが、事実上の被告D損保がこれを拒否した。
結局、判決となったが、裁判所はAの後遺障害について、第12級9号(局部に頑固な神経症状を残すもの)とし、CはAに対し、650万円を支払えという内容であった。(年5パーセントの利息含む)
Aに重度の視覚障害があり、後遺障害12級であるにもかかわらず、労働能力喪失期間が5年間とされてしまったことが残念であった。
Aの両親が心ない医者の言動にめげることなく、最後まであきらめなかったことが後遺障害非該当から第12級9号の認定になったものである。
Aの両親は障害者に対する厳しい現状に嘆きつつも、裁判所が第12級9号に認定してくれたことを感謝し、この結果を受け入れたものである。
最近では、外傷性のヘルニアを認めない見解が裁判官の考え方に影響を与えることが多くなっているので、被害者側弁護士としては協力医の確保がより必要になっている。