(2017年3月14日解決)
依頼者A(22才の男性、大学生)は、S大学のサイクリング部に所属していたところ、15名程度の部員と共に競技に出るための練習に参加し、狭い山道の上り坂を進行していたところ、前方からB運転のダンプカーが下ってきたので避け切れず、ダンプカーの前面に衝突し、右橈尺骨遠位端骨折の障害を負ったものである。
Aは、病院に入院し、治療を受けたが、右手関節に機能障害を残し、字を書くことに困難が生じ、大学での実験にも支障をきたすことになった。
Aは、他県の国立大学の工学部の学生であったが、実家が静岡市内にあり、当事務所に相談があった。
当事務所は、後遺障害の症状固定後、病院からカルテと自賠責後遺障害診断書を入手し、意見書を作成し、自賠責会社を通じ、静岡自賠責損害調査事務所にAの後遺障害について被害者請求をした。
静岡自賠責損害調査事務所は、Aの右手関節に、左手関節と比べて2分の1以下の可動域制限があるとして、第10級10号(1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの)に該当するものと判断した。
Bの勤務しているC会社の加入している自動車任意保険D損害保険会社は、Aに過失を50パーセントとして、治療費134万9073円を除き、Aの損害額を869万5737円と計算し、提示した。
しかし、この額があまりにも低額なので、当事務所は、静岡地方裁判所に損害賠償請求の訴を提起した。
裁判官は、Aの過失を30パーセントとして、後遺障害の逸失利益もD損保の提示した1504万1048円を大幅に上回る2496万6847円とし、BはAに対し、2761万円を支払うこととの和解案を提示した。
当事務所は、Aの過失が30パーセントとされたことには不満であったが、Aの父はE損保に人身傷害特約を付けていたことから、E損保から過失相殺分は支払われることから、この和解案を受け入れた。
結局、Aは当初の提示額からすると、1257万円の増額があったものであり、又、過失相殺分1026万円も入手できるので満足していた。
人身傷害特約付保険に加入している場合、過失の割合を争うよりも、いかに全体の損害賠償額を多くするかということに力点を置かなければならないので、この場合、傷害の慰謝料210万円、後遺障害の慰謝料が550万円になったことも意味のあることであった。
弁護士を依頼せずに損害保険会社と交渉する場合、自分の加入している任意保険会社に過失相殺分を請求することを忘れることがあるので注意が必要である。