交通事故被害のQ&A

Q1 交通事故にあった際に健康保険は使用できないの?

そんなことはありません。交通事故にも健康保険を使用できます。交通事故について、あなたにいく分でも過失がある場合、健康保険を使った方がむしろ得です。

仮に、あなたに20パーセントの過失があり、200万円の治療費がかかった場合、加害者に負担させる治療費は80パーセントの160万円ということになり、40万円をあなたが実質的に負担しなければなりません。

健康保険を使用すれば、あなたの過失による負担分は健康保険が持つことになります。
健康保険を使用した場合の診療の単価が、そうでない場合の自由診療の単価より低い為、病院側で「健康保険を使用できない。」と述べているものと思われますが、厚生労働省は交通事故による治療も保険給付の対象となると明言しています。

Q2 治療が必要なのに、保険会社が治療費を出してくれない!

損害保険会社は、むち打ち症の治療期間は6ヶ月位であるとして、この頃になると治療を打ち切って欲しいと要請してくることが多々あります。

早ければ2ヶ月位で打ち切るようにと言ってきた例もあります。あなたに出ている現在の症状が交通事故によるものであり、医者が今後も治療の必要があると診断している場合、治療を継続してもよいかと思われます。治療の要否を決めるのは損害保険会社ではなく、あなたの治療に従事している医者ですし、あなた自身です。

但し、あなたが必要もないのにだらだらと治療を続けると過剰診療となり、治療費全額を加害者に負担させることができない場合もありますのでご注意下さい。
いずれにしても、医者から今後の治療について、よく説明を受ける必要があります。

Q3 交通事故傷害の場合、加害者にどのような請求ができるの?

あなたは加害者に対して、治療費、付添看護費、入院中の雑費、通院交通費、器具・装具等購入費等の請求をすることができます。
その他に交通事故によって仕事を休んだり、主婦労働ができなかった場合、休業損害を請求することができます。

さらに、入通院期間を基礎として算出された傷害の慰謝料も請求できます。詳しくは当事務所の弁護士にご相談下さるか、Q12で述べている「赤い本」をご参照下さい。

Q4 交通事故で入院した際の慰謝料はどうなっているの?

障害の慰謝料の額は入院や通院の期間でおおむね定額化されています。むち打ち症で他覚症状のない場合は後掲の別表Ⅱを、それ以外の傷害の場合は後掲の別表Ⅰを用いることになっています。

通院が長期になった場合で、かつ、不規則な場合は、実日数の3.5倍程度を慰謝料算定の為の通院期間の目安とするとされています。
裁判官もこれらの表を参考にして傷害の慰謝料額を決定しています。

損害保険会社はこれよりも低い額を提示することが多いのですが、ねばり強く交渉すれば、この額に近づくことがあります。

Q5 後遺障害が残存した場合はどうでしょうか?

Q3であげた損害の外に後遺障害による逸失利益、後遺障害の慰謝料が請求できます。

Q6 夫が交通事故で死亡した際の加害者への損害請求は?

主には葬儀費用、死亡による逸失利益、慰謝料です。それ以外に死亡に至るまでの治療費等の支出や付添看護をしていればそれも請求できます。

葬儀費用は原則として150万円ということになっていますが、これ以上支出した場合でも、多くの上積みは期待できません。せいぜい、20万円ないし30万円というところです。

逸失利益の算定方式は、基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数 ということになっています。

就労可能年数は原則として67才までとされており、生活費控除率は、一家の支柱で被扶養者1人の場合40パーセント、被扶養者2人の場合30パーセント、女性(主婦、独身、幼児)30パーセント、男性(独身、幼児)50パーセントとされております。

死亡による慰謝料は原則として、一家の支柱2800万円、母親、配偶者2400万円、その他2000万円から2200万円とされていますが、勿論、悪質な事故の場合には加算されることもあります。

Q7 主婦の場合、交通事故の休業損害の額はどのように算出するの?

あなたに現実の収入がなくても、あなたは主婦として家事に従事しているのですから、家事労働は損害額の算出にあたっても評価されなければなりません。この額は、厚生労働省が調査した各年度の統計数値である賃金センサスの女子労働者の平均賃金を用いるとされています。

2004年度の賃金センサスにより、学歴を問わないとしますと、45歳の女子労働者の平均賃金は年収で387万0900円ということになります。

ちなみに、中卒の場合は278万8300円、高卒の場合は337万1400円、短大卒の場合は448万2200円、大卒の場合は592万6100円ということになっています。
あなたはこれらの額をもとにして、家事労働に従事できなかった期間の損害を休業損害として計算すればよいと思います。

仮に、あなたにパートタイマーや内職による現実の収入があったとしても、いずれか高い方をもとにして計算すればよいのです。損害保険会社は少ない現実の収入をもとにして休業損害を計算することもありますので注意しましょう。

Q8 後遺障害の等級に納得がいかない!

自賠責の後遺障害の等級には1級から14級まであります。後遺障害の等級によって労働能力喪失率が異なり、損害額が大きく違ってしまいます。1級違っても相当に違います。その意味で後遺障害が正しく認定されることが重要です。その為には、まず主治医に後遺障害の内容を詳しく記載した後遺障害診断書を作成してもらわなければなりません。

おうおうにして、医者の中には不慣れでこの診断書を簡単に記載する方がいますが、これでは適正な後遺障害等級を獲得することができず、あなたの不利益になります。

記載が不十分な場合には、あなたの後遺障害の内容と程度を反映したものにしてもらう必要があります。そのような適正な後遺障害診断書を提出しても自賠責調査事務所で、あなたの満足のいく等級が認定されない場合が多々あります。

その場合、損害保険会社を通して自賠責調査事務所に異議の申立てをすることになります。異議の申立てをしても等級が変わらない場合、地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起し、最終的には裁判官に判断をしてもらうことになります。異議の申立てや裁判については、当事務所の弁護士にご相談下さい。

Q9 高次脳機能障害の賠償額はどれくらい? 

こちらの事例を参考にください。
私の娘(24歳)は交通事故により頭部外傷を負い、高次脳機能障害を被っています。娘の後遺障害は自賠責後遺障害等級表の第1級1号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの)に認定されました。
娘は常に介護を要する状態で、私もこれから高齢になることを考えると心配です。将来の介護費用について、加害者の加入している損害保険会社の社員は、娘の平均余命まで1日あたり8000円を提示し、これ以上は出せないと言っています。この額は適正でしょうか。

家族介護費としては1日あたり8000円が認められていますが、娘さんの介護は家族介護では限界があります。あなた自身の生活を考えますと、職業的介護人の介護が必要であると思いますし、特にこれからあなたが年をとっていくことを考えますと、なおさらその思いを強くします。裁判では職業的介護人を頼むということで1日あたり1万5000円あるいは2万円を超える判決が出ています

これらを参考にすると1日あたり8000円ではあまりにも低いと思います。損害保険会社は娘さんに対する損害賠償額が高額になるので、8000円以上出さないと言っていると推測されますが、あなたが営利企業の内部事情を考慮する必要はありません。これ以上出せないというのであれば、訴訟を提起し、裁判官に決めてもらうことがベストだと思います。

Q10 後遺障害の慰謝料はどのようになっているの?

判決では、おおむね後遺障害慰謝料は、後遺障害等級ごとに右の表ように定額化されています。
損害保険会社は自社の中に、これより低い基準を有し、被害者に提示しているのが現状です。
ひどい場合には後遺障害の損害賠償費目を後遺障害の逸失利益と後遺障害の慰謝料として区分せず、一括して後遺障害の損害として自賠責から出る保険金額を提示してくる場合もありますので注意しましょう。
なお、自賠責の後遺障害保険金は最高1級で4000万円、最低14級で75万円出ます。
第1級 2800万円
第2級 2370万円
第3級 1990万円
第4級 1670万円
第5級 1400万円
第6級 1180万円
第7級 1000万円
第8級 830万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第13級 180万円
第14級 110万円

Q11 過失相殺の割合について教えてください。

交通事故では被害者にも落ち度がある場合があります。このような場合、損害の公平な分担という観点から、被害者の落ち度に応じて、加害者が被害者に支払う損害賠償の額が減額されます
これが過失相殺といわれるものであり、東京地方裁判所民事第27部では「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂四版)」(別冊判例タイムズ16、判例タイムズ社刊3150円)を公刊し、その割合を示しています。
この基準は全国の裁判所が採用しており、静岡地方裁判所でも、ほぼこの基準によって判決や和解がなされております。損害保険会社もこの基準を用い交渉しています。この基準を詳しく知りたい方は、上記書物をお買い求めいただくか、当事務所の弁護士にご相談下さい。

Q12 損害保険会社の提示する損害賠償額に納得がいかない!

あなたは損害保険会社が提示した計算書の各損害費目を一つ一つチェックしなければなりません。その場合、財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部(〒100-0013東京都千代田区霞が関1丁目1番3号、弁護士会館3階、TEL03-3581-1782)が発刊している「民事交通事故訴訟損害賠償算定基準」(2006年版で2800円)を参考にして下さい。

この本はいわゆる「赤い本」と称され全国の裁判所も参考にし、「赤い本」をもとに判決、和解、調停がなされています。
この本は財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部の弁護士が全国の交通事故裁判例を分析し、損害賠償算定基準としたものでありまして、交通事故を解決する為には必要不可欠な本です。
その意味で「赤い本」の示す基準は、法規範(世の中の決まり)化したものと同視できますが、損害保険会社は、通常、示談の段階ではこの基を用いることを渋ります。
おそらく、この基準を用いると損害賠償額が多くなり、損害保険会社の儲けが少なくなることを考慮しているのだと推測されますが、私ども交通事故被害救済に取りくむ弁護士は、被害者に弁護士が代理人としてついていようといまいと、又裁判を提起しなくとも「赤い本」の基準によって解決すべきだと思います。

「赤い本」は日弁連へ電話をかければ容易にお買い求めできますので、あなたも「赤い本」の記載されている内容を参考にして損害保険会社と交渉して下さい。

なお、たまには自賠責の示す低い基準で損害額を計算し、あなたに提示する損害保険会社もありますのでご注意下さい。いずれにしましても、とことん損害保険会社の社員と話しあって下さい。それでも納得できなければ裁判で解決するのがベストです。

Q13 交通事故裁判は容易に提起できますか。

話しあいで解決するのがベターだとは思いますが、あまりにも損害保険会社の提示した金額が「赤い本」の基準とかけ離れていれば裁判を提起した方がよいと思います

裁判を提起する為には裁判所に納める印紙、切手代等の実費、弁護士費用がかかりますが、当面のお金がなくても弁護士と相談すれば何とかなるものと思われます。

後遺障害等級が認定されていれば、自賠責から保険金を受領し、それを費用にあてればよいでしょう。
判決では認められた額の10パーセント程度の弁護士費用を加害者に負担させることが普通ですし、さらに交通事故の発生した日から損害賠償金が支払われるまで年5パーセントの割合による遅延損害金もつきます。

判決が確定すれば、損害保険会社はすぐに判決で認められた額を支払ってくれます。

もし、あなたが交通事故裁判を提起することを考え、費用を心配しているようでしたら、当ホームページの「弁護士費用」をクリックされ、「交通事故(被害者側のみ)の損害賠償請求に要する費用」欄をご参照下さい。

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