むち打ち症被害者が留意しなければならないこと

2015年7月28日

はじめに


本コラムで何回も述べていますが、交通事故の60パーセントが追突等によるむち打ち症事案です。

以前は頚部痛や腰痛等の症状が残存していれば、第14級9号(局部に神経症状を残すもの)を認定させることは比較的容易でしたが、今は、第14級9号を認定させることも、かなり難しくなっています。

この背景には、損害保険会社の保険金支払いの抑制の願望があるかと思います。
静岡地方裁判所の裁判官もほとんどの方が、静岡自賠責損害調査事務所の認定が合理性のあるものとして解決にあたっていますので、この認定が正確にされないと裁判所の審理も間違わせてしまうことにもなりかねません。

以前は、裁判官は、鑑定を容易に採用してくれていましたが、今は、むち打ち症事案のような比較的、等級が軽度なものは、自分で判断できるとして、原則的に鑑定はしない方向にむかっています。 鑑定をしないと、ほぼ、静岡自賠責損害調査事務所の認定を前提とすることになります。

ここが、被害者側弁護士の苦しみ悩むところですが、現実は、そのようになっていることをむち打ち事故被害者は銘記すべきでしょう。それでは、第14級9号や第12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)が認められないかと言うとそうではありません。

 

そのためには、むち打ち症の被害者は、事故当初から次の点に留意して治療を受けるべきです。

 

1 まず事故の態様です。

追突等によって、車両損傷が大きい場合は、頚、腰部等に大きな傷害があったはずですから、このことを実況見分にあたった警察官に対しては勿論のことですが、初診の医師に対しても訴えカルテに記載してもらっておく必要があります。

車両の損傷がそれ程でない場合でも、頚部が過屈曲、過伸展することはありえますので、その場合はこのことも主張しておくべきでしょう。

裁判所は常識的に物事を判断しますので、車両にかすり傷程度の痕跡がある程度では、まずむち打ちによる後遺障害を認めてはくれません。

軽微な追突で頚部痛、腰痛がある場合は、上記の点を丹念に訴えておかなければならないのです。

 

2 症状の一貫性が大事です。

 

静岡自賠責損害調査事務所は、事故当初から医師に対して、頚部痛、腰部痛、手足のしびれを訴え、その症状が治療期間中も続き、症状が固定した場合は、その症状が将来も残存する可能性があるとして、少なくとも第14級9号の後遺障害を認めています。

これらの等級が少なくとも認められるためには、カルテの中に上記の症状が記載されており、このカルテの記載をもとに自賠責後遺障害診断書が作成されていなければなりません。

自賠責後遺障害診断書作成時に、はじめて痛みやしびれが記載されたとしても、静岡自賠責損害調査事務所はそれを信用せず、症状の一貫性はないと判断し、後遺障害非該当としています。

こんなことは当事務所では、よく経験しています。

主治医とは何でも話しあえる間柄になり、被害者の訴えることを、そのままカルテに記載してもらう必要があります。
 

3 自覚症状のみでは・・・

自覚症状のみでは第14級9号に認定されるのが精一杯で第12級13号を認定してもらいたいと考える場合には、腱反射やジャクソンテスト、スパーリングテスト、徒手筋力テスト、FNSテスト、ラセーグテスト、SLRテストを受け、神経学的な異常を検査結果によって裏づける必要があります。

これらの検査を全く実施しない医師もいますので、被害者は、これらの検査の重要性を訴え、検査をしてもらう必要があります。
 

4しびれ等の異常知覚がある場合には必ず頚部や腰部のMRIの撮影をしてもらいましょう。

このMRI画像所見がなくては、今では第12級13号を獲得するのはほとんど無理です。

MRI所見によって、ヘルニアがあるか否か、そのヘルニアがどの神経根や脊髄を圧迫しているかは容易にわかるのですが、まだ現段階では、静岡自賠責損害調査事務所はこの画像所見を無視しています。

しかし、この画像所見があれば、経年性の変性所見だとはしますが第14級9号を認定することは多いのです。

いずれにしても、MRIの所見がなければ、静岡自賠責損害調査事務所にも、裁判所にも適正な後遺障害を認定させることは不可能となっています。

 

まとめ

以上、1から4の点にあなたが留意して医師に依頼したとしても、あまりいい顔をしない医師もいますので、この場合、早目に転医を考える必要があります。

遅めの転医は後から治療する医師にも迷惑をかけますし、静岡自賠責損害調査事務所も、後医の診断に重きを置かなくなり、前医の診断によることになります。

適確な後遺障害診断書を作成してもらうためには、被害者の努力も大切です。

当事務所は、むち打ち症の被害者を1人でも多く救済したいとの考えから活動していますが、その救済が、かなり困難になっていることも正直に述べなければなりません。

交通事故の60パーセントが追突事故ですので、この被害による損害賠償額を抑制したいということが、むち打ち症の等級の非該当の底流にあるとすると何とも悲しい思いがします。

被害実態を知るのは被害者本人ですし、それをサポートする被害者側弁護士です。

現実は厳しいですが、当事務所は非該当を第14級9号に、第14級9号を第12級13号にするべく医学的にも研鑽を積み、挑戦を続けます。

 

それが被害者側弁護士の使命だと考えるからです。

 


 

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