後遺障害の逸失利益
①事故前の年収×②労働能力喪失率×③ライプニッツ係数(④労働力喪失期間によります)
①事故前の年収
・給与所得者
事故前の現実の収入額(本給、諸手当、賞与、昇給、退職金)
・自営業者、自由業者、事業所得者、サービス業
事故前の収入額、事業収入額中に占める本人の寄与分
・家事従事者
賃金センサスの女子労働者の全年齢平均賃金
※賃金センサス:厚生労働省調査の「賃金構造基本統計調査」
・幼児、学生など
賃金センサスの男女別・全年齢平均賃金を用います。幼児は全学歴平均を用いるが、高校生は高卒者の額を用います。
ただし、大学進学の蓋然性が高い場合は大卒の額を適用します。大学生の場合は専攻により就職する業種を想定した上で、その業種の大卒賃金を用います。
・芸能人
公演などの契約に基づき収入を算出します。
・スポーツ選手
過去3年間の平均収入、もしくは、同程度の選手から類推して算出します。活躍できる年齢を過ぎる期間については賃金センサスの平均収入を用います。
・無職者
男女別平均賃金(年齢別または全年齢)を用います。
ただし、有能だが会社の倒産などにより失業中のものは当時の年収を適用する場合があります。
また、労働の意思がない利子生活者や失業者には逸失利益は認められません。
・年金生活者
推定余命期間に受け取る予定だった恩給、年金、遺族扶助料
・農業
帳簿がないことが多いので、作付面積・農産物から売り上げを算出し、そこから資本利息や地代や種苗費などの原価を差し引き、さらに、家族労働費を加えて年収を計算します。
②労働能力喪失率
後遺障害等級によって目安が決定されます。
1級~3級:100%
4級:92% などです。
別表第一 (第二条関係)
等級 |
介護を要する後遺障害 |
保険金額 |
労働能力
喪失率 |
第1級 |
1 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
|
4000万円 |
100/100 |
第2級 |
1 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
2 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
|
3000万円 |
100/100 |
別表第二 (第二条関係)
等級 |
後遺障害 |
保険金額 |
労働能力
喪失率 |
第1級 |
1 |
両眼が失明したもの |
2 |
咀嚼及び言語の機能を廃したもの |
3 |
両上肢をひじ関節以上で失つたもの |
4 |
両上肢の用を全廃したもの |
5 |
両下肢をひざ関節以上で失つたもの |
6 |
両下肢の用を全廃したもの |
|
3000万円 |
100/100 |
第2級 |
1 |
一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になつたもの |
2 |
両眼の視力が0.02以下になつたもの |
3 |
両上肢を腕関節以上で失つたもの |
4 |
両下肢を足関節以上で失つたもの |
|
2590万円 |
100/100 |
第3級 |
1 |
一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつたもの |
2 |
咀嚼又は言語の機能を廃したもの |
3 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
4 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5 |
両手の手指の全部を失つたもの |
|
2219万円 |
100/100 |
第4級 |
1 |
両眼の視力が0.06以下になつたもの |
2 |
咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの |
3 |
両耳の聴力を全く失つたもの |
4 |
一上肢をひじ関節以上で失つたもの |
5 |
一下肢をひざ関節以上で失つたもの |
6 |
両手の手指の全部の用を廃したもの |
7 |
両足をリスフラン関節以上で失つたもの |
|
1889万円 |
92/100 |
第5級 |
1 |
一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になつたもの |
2 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
3 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
4 |
一上肢を腕関節以上で失つたもの |
5 |
一下肢を足関節以上で失つたもの |
6 |
一上肢の用を全廃したもの |
7 |
一下肢の用を全廃したもの |
8 |
両足の足指の全部を失つたもの |
|
1574万円 |
79/100 |
第6級 |
1 |
両眼の視力が0.1以下になつたもの |
2 |
咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの |
3 |
両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの |
4 |
一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの |
5 |
脊柱に著しい奇形又は運動障害を残すもの |
6 |
一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの |
7 |
一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの |
8 |
一手の五の手指又はおや指及びひとさし指を含み四の手指を失つたもの |
|
1296万円 |
67/100 |
第7級 |
1 |
一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になつたもの |
2 |
両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの |
3 |
一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの |
4 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
5 |
胸腹部臓器の機能に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
6 |
一手のおや指及びひとさし指を失つたもの又はおや指若しくはひとさし指を含み三以上の手指を失つたもの |
7 |
一手の五の手指又はおや指及びひとさし指を含み四の手指の用を廃したもの |
8 |
一足をリスフラン関節以上で失つたもの |
9 |
一上肢に仮関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
10 |
一下肢に仮関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
11 |
両足の足指の全部の用を廃したもの |
12 |
女子の外貌に著しい醜状を残すもの |
13 |
両側の睾丸を失つたもの |
|
1051万円 |
56/100 |
第8級 |
1 |
一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になつたもの |
2 |
脊柱に運動障害を残すもの |
3 |
一手のおや指を含み二の手指を失つたもの |
4 |
一手のおや指及びひとさし指又はおや指若しくはひとさし指を含む三以上の手指の用を廃したもの |
5 |
一下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
6 |
一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
7 |
一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
8 |
一上肢に仮関節を残すもの |
9 |
一下肢に仮関節を残すもの |
10 |
一足の足指の全部を失つたもの |
11 |
脾臓又は一側の腎臓を失つたもの |
|
819万円 |
45/100 |
第9級 |
1 |
両眼の視力が0.6以下になつたもの |
2 |
一眼の視力が0.06以下になつたもの |
3 |
両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
4 |
両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
5 |
両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
6 |
咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの |
7 |
両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの |
8 |
一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの |
9 |
一耳の聴力を全く失つたもの |
10 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
11 |
胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当に制限されるもの |
12 |
一手のおや指を失つたもの、ひとさし指を含み二の手指を失つたもの又はおや指及びひとさし指以外の三の手指を失つたもの |
13 |
一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの |
14 |
一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの |
15 |
一足の足指の全部の用を廃したもの |
16 |
生殖器に著しい障害を残すもの |
|
616万円 |
35/100 |
第10級 |
1 |
一眼の視力が0.1以下になつたもの |
2 |
咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの |
3 |
十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
4 |
両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたものの |
5 |
一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの |
6 |
一手のひとさし指を失つたもの又はおや指ひとさし指以外の二の手指を失つたもの |
7 |
一手のおや指の用を廃したもの、ひとさし指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指及びひとさし指以外の三の手指の用を廃したもの |
8 |
一下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
9 |
一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの |
10 |
一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
11 |
一下肢の三大関節の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
|
461万円 |
27/100 |
第11級 |
1 |
両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2 |
両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
3 |
一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
4 |
十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
5 |
両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの |
6 |
一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの |
7 |
脊柱に奇形を残すもの |
8 |
一手のなか指又はくすり指を失つたもの |
9 |
一手のひとさし指の用を廃したもの又はおや指及びひとさし指以外の二の手指の用を廃したもの |
10 |
一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの |
11 |
胸腹部臓器に障害を残すもの |
|
331万円 |
20/100 |
第12級 |
1 |
一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2 |
一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
3 |
七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
4 |
一耳の耳殻の大部分を欠損したもの |
5 |
鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい奇形を残すもの |
6 |
一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
7 |
一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
8 |
長管骨に奇形を残すもの |
9 |
一手のなか指又はくすり指の用を廃したもの |
10 |
一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの |
11 |
一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの |
12 |
局部に頑固な神経症状を残すもの |
13 |
男子の外貌に著しい醜状を残すもの |
14 |
女子の外貌に醜状を残すもの |
|
224万円 |
14/100 |
第13級 |
1 |
一眼の視力が0.6以下になつたもの |
2 |
1眼に半盲症,視野狭窄又は視野変状を残すもの |
3 |
両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
4 |
五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
5 |
一手のこ指を失つたもの |
6 |
一手のおや指の指骨の一部を失つたもの |
7 |
一手のひとさし指の指骨の一部を失つたもの |
8 |
一手のひとさし指の末関節を屈伸することができなくなつたもの |
9 |
一下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
10 |
一足の第三の足指以下の一又は二の足指以下の一又は二の足指を失つたもの |
11 |
一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの |
|
139万円 |
9/100 |
第14級 |
1 |
一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
2 |
三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
3 |
一耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたものの |
4 |
上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
5 |
下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
6 |
一手のこ指の用を廃したもの |
7 |
一手のおや指及びひとさし指以外の手指の指骨の一部を失つたもの |
8 |
一手のおや指及びひとさし指以外の手指の末関節を屈伸することができなくなつたもの |
9 |
一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの |
10 |
部に神経症状を残すもの |
11 |
男子の外貌に醜状を残すもの |
|
75万円 |
5/100 |
ただし、上記の値を参考として、裁判所では各自の職業や年齢を考慮して決定します。
③ライプニッツ係数
資産に年5%の利息がつくと見込んで、逸失利益を複利計算に補正するための係数をさします。(この補正により、中間利息を差し引くことになる)
④就労可能年数
原則として、67歳までを就労可能年数とします。およそ55歳以上の高齢者(主婦を含む)については67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長期のほうを使用します。
※死亡逸失利益の計算の際には年収から生活費を控除したが、後遺障害逸失利益の計算では、事故後も生活が続いているため控除は行いません。
※後遺障害があっても減収がない場合は、逸失利益が認められない場合もあります。
(ただし、慰謝料が増額されることはあります)