家族の一人が交通事故により脊髄損傷を負った場合には,どのようなことを知っておけばよいか
交通事故に遭った方が脊髄損傷を負った場合,家族はどのようなことを知っておけばよいでしょうか。
様々なことがありますが,10点に絞って説明します。
1 受傷した家族の状態を知ること
脊髄損傷とは,脳からおしりまで繋がっている神経についてそこを守っている骨が骨折等を起こすことによって神経に損傷が生じることをいいます。完全に神経が切れれば完全損傷,部分的な損傷は不全損傷となります。
脊髄損傷が生じると,
・運動機能障害
・感覚障害
・自律神経障害
・排せつ機能障害
など様々な症状が出てきます。損傷の部位や程度によって症状が異なってきます。
まずは主治医にどこの部分が損傷しているか,損傷の程度はどうか,どのような障害が出てくることが予想されるかを確認しておくとよいと思います。
2 受傷した家族の学校や会社等に関する手続きをすること
症状によっては
長期間の入院が必要な場合があります。
主治医に症状を確認し,長期間の入院が見込まれる場合には,その旨の記載のある診断書を用意するとよいと思います。学校や職場などに連絡し,症状を伝えて休職や休学の手続きをするとよいと思います。
3 適用される保険の確認をすること
交通事故の加害者の
任意保険や
自賠責保険,
担当者などを確認しておくとよいと思います。また,勤務中の事故などのように
労災保険が適用になる場合には,労災保険を使うことをも検討した方がいいと思います。
被害者の方や同居の家族の加入している保険で適用される特約があるかどうか確認するとよいと思います。
4 こまめに記録をしておくこと
付添や入院生活でかかった費用については,今後かかる費用を加害者に請求することを考えるとこまめに
レシートをとっておくことが望ましいです。また,付添をした場合には,どのような介助やサポートをしたのか
日記等で記録しておくことが望ましいです。
保険会社は,通常,付添費用について簡単には認めていないので,将来の裁判等の請求のためにも記録化して証拠としておくことが必要になります。
5 各種の検査をしてもらうこと
神経について異常が生じている場合には,深部腱反射などの各種神経学的検査を実施してもらい,カルテ等に記載してもらうとよいと思います。
かかる検査の実施がないと,神経学的な異常があることについて保険会社が疑う可能性があります。
また,レントゲン,MRI,CTなどの検査を実施してもらい,精緻な判断をしてもらうことが望ましいです。
6 床ずれ,拘縮,尖足の防止をこころがけること
脊髄損傷の患者には,移動が制限されることにより各種の症状が出てきます。
主な症状が
床ずれ,拘縮,尖足です。
褥瘡(床ずれ)は,同じ部位に圧が継続してかかることにより皮膚の内部組織が壊死していくことをいいます。
こまめに体位を交換したり,交換を看護師などにお願いするなどして床ずれを防ぐことが必要になります。
拘縮は,関節が固まってしまい,動かなくなることをいいます。こまめにマッサージをすることが予防法として考えられます。
尖足は,足の甲が水平になって真っ直ぐになることをいいます。関節が90度以上曲がるようにマッサージをすることが予防法として考えられます。
7 転院先を検討すること
最初に搬送された病院で長期間リハビリまで受けることができるとは限りません。
主治医などに相談することや,インターネット等で情報を収集するなどして,転院先を決定することが必要だと思います。
その際は,自宅などから近いところが望ましいです。
8 在宅での生活の準備をすること
症状にもよりますが,在宅での生活を患者が行う場合には,種々の手続きが必要になることがあります。
復職や復学できる場合には,各手続きを取ることが必要になります。
住環境の整備が必要な場合があります。
例えば,
・車椅子の購入や
・手すりの設置
・バリアフリー化
・引越し
などです。リフォームをする場合には,リフォーム前の家の様子を写真に残しておくとよいと思います。
在宅での生活になってもリハビリ等で通院をすることが考えられますので,通院先を決めておくといいと思います。
身体障害者手帳の申請をお勧めします。身体障害手帳の交付により税金の控除やJR運賃の割引などの制度を受けることができます。
9 泌尿器科等にも通院をしておくこと
脊髄損傷の患者の場合,
排尿障害等の症状が出てくることがあります。
その際は泌尿器科に継続的に通院して症状が継続していることを記録に残しておくことが必要になります。整形外科だけでなく症状に関連する分野での通院も受けておくことが望ましいです。
10 自覚症状や他覚所見の記載のある後遺障害診断書を作成してもらうこと
自賠責保険にて後遺障害の認定を受けるためには
後遺障害診断書を作成してもらうことが必要になります。信頼できる主治医に書いてもらうことが望ましいです。
特に
・自覚症状
・他覚所見
・可動域制限
などの記載は漏れなく書いてもらうことが必要になります。
排尿障害等整形外科以外の分野での後遺障害も残存している場合には,かかる分野での後遺障害診断書も作成してもらうことが必要になります。