(2017年6月21日解決)
依頼者A(32才の男性、期間工)は250㏄のバイクを運転して直進中、右方から来たB運転の車両と衝突し、路上に転倒し頭部打撲、頚部挫傷、腰部挫傷の傷害を負った。
Aは、事故以来、頭痛、頚部痛、腰痛、吐き気、めまいに悩まされ、倦怠感、集中力の低下で仕事ができなくなった。
MRIやCTの画像に何らの異常所見は認められず、主治医は交通事故外傷後頭痛と診断していた。
当事務所ではAから相談され脳脊髄液減少症を疑がい山王病院の高橋浩一医師の診断を勧めた。
高橋医師はAを診察し、外傷性頚部症候群、脳脊髄液減少症と診断し、意見書も作成してくれた。
それをもとに、自賠責会社を通じ静岡自賠責損害調査事務所に後遺障害についての被害者請求をしたところ後遺障害非該当となった。
異議の申立てをしたところ、やっとのことで第14級9号(局部に神経症状を残すもの)が認められたが、脳脊髄液減少症は否定された。
AはやむなくBを相手どって静岡地方裁判所に損害賠償請求の訴を提起したが、裁判官は脳脊髄液減少症は認めず、第14級9号とし、Aが既に休業補償等として540万円を受領しているので、Bに支払い分はないとしてAの請求を棄却した。
Aが東京高等裁判所に控訴したところ、裁判官は脳脊髄液減少症は認められないが、Aの症状は少なくとも第12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に該当するものとし、AB双方に和解を勧告し、Aの過失を原審どおり25パーセントとし、BがAに対し既払金(540万円)の他に420万円を支払うということで訴訟上の和解が成立した。
今、脳脊髄液減少症は保険適用になったものの、裁判所ではことごとく認められず敗訴が続いている。
まことに遺憾な事態が続いているが、これが裁判所の現実である。
こうした中で、高裁の裁判官の中でも親切な方がおり、本件は、脳脊髄液減少症は認めないが、少し等級をあげるということでバランスをとってくれたものである。
脳脊髄液減少症では当初の起立性頭痛の存在が重要視されているので、起立性頭痛がある被害者は必ずこのことを主治医に伝えカルテに記載しておいてもらう必要がある。
いずれ脳脊髄液減少症の被害は普通に認められる時代も到来すると思われるので被害者はあきらめず、裁判官を説得して欲しい。