高齢者が被害者となった交通事故についてその家族が知っておくべきこと

高齢者が交通事故に遭った場合,その家族が知っておきたいことがいくつかあります。

 

第1に,頭部を打つような事故に遭った場合には,交通事故後に認知症のような症状が出たような場合であっても,高次脳機能障害の症状が出ている可能性があるということです。

高齢者であっても頭部に強い衝撃が加われば高次脳機能障害の症状が出てきます。もっとも,記憶力の低下などは認知症などでも見られる症状であり,加齢性のものであると判断されかねません。したがって,交通事故後に性格が変わることや記憶力が低下するなどの症状が出た場合には,高次脳機能障害を疑うべきだと思います。

 

第2に,重傷を負った場合には成年後見の制度も検討した方がいいということです。寝たきり等の重い症状になった場合には,自らの力で損害賠償請求権を行使することが難しくなります。その場合には,家族の方を後見人にして成年後見人を選任することで対応することになります。

 

第3に,介護等の負担が増える可能性があるということ,介護をした際には日記等で当時の介護の大変さや被害者の症状の重さを記録しておくということです。高齢者が被害者となった場合,被害者自身の足腰が悪いと入院や通院などで付添をするということが多くなると思います。

しかし,保険会社は付添費用の支払いには簡単には応じません。もし,裁判等になった場合に付添費用を認めてもらうためには付添の必要性を立証する必要があります。その際にはこまめに日記をつけることなどをして被害者の病状を記録しておくことが症状の重さと付添費用の必要性を裏付ける証拠となります。

 

第4に,損害賠償額が若年層などと比較して低額になってしまうことがよくあるということです。損害賠償において大きな金額を占めるのは逸失利益です。逸失利益は交通事故により得ることができなかった収入の部分についてその補填にあたる費用になります。この逸失利益は,基礎収入,労働能力喪失率(後遺障害の重さ),労働能力喪失期間によって決まります。

そのため,年金暮らし等の高齢者の場合には,同じような事故の同じような後遺障害においても,若年層や青年層などと比較すると,基礎収入や労働能力喪失期間に差が生じてしまい,逸失利益が若年層などと比較して低額になってしまうことがあります。そのため,交通事故の場面においても,賠償額が若年層などと比較して低額になってしまうことがよくあるということを知っていただければと思います。

 

もっとも,基礎収入についても,当該高齢の被害者が家事や農業等をそつなくこなしていたのであれば稼働能力が高く,基礎収入を低く抑えられないようにする必要があります。当該被害者が日頃からどのような家事労働や仕事をしていたのかについてまとめておくとよいと思います。

 

他にも具体的な事件においては個別に知っておくべきことなどはあると思います。現在直面している高齢者の交通事故について具体的な事を知りたいという場合には,事務所にご連絡いただき法律相談の予約をしていただければと思います。

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