2015年8月31日判決
依頼者A(会社員37歳)は、片側一車線の見通しの良い直線道路を被害車両で走行していたところ、反対車線を走行してきた加害者運転の加害車両が突然センターラインを越えて、A運転の被害車両の走行ライン上に進入してきたため、避けきれず加害車両と正面衝突し、頚椎捻挫等の傷害を負った。
静岡自賠責損害調査事務所は、Aの後遺障害について、14級9号(局部に神経症状を残すもの)に該当すると判断した。
Aは、上記判断を不服として、静岡地方裁判所掛川支部へ損害賠償請求の訴えを提起し、頚椎MRIの画像鑑定を得るなどしてAの後遺障害は12級13号に該当すると主張した。
裁判官は、Aの後遺障害の症状は、本件事故による他覚的所見が認められ、その神経症状も多くの部位に生じているため、14級9号相当にとどまると認めるのは相当ではないと判断した。
しかし一方で、Aには、骨折や脱臼の器質的な損傷はなく、Aが訴えている症状が治療によって本件事故時から軽減されていることから、後遺障害等級12級13号相当であるとも認めがたいとした。
その上で、Aの症状や治療経緯等を考慮して、後遺障害の程度としては、13級相当の労働能力喪失を認めるのが相当であると判断し、治療費等の既払い金を除いた約520万円を損害と認めた(遅延損害金を含めると約600万円)。
本件判決は、Aの主張した12級13号相当であるとの主張は認めなかったものの、静岡自賠責損害調査事務所の14級9号という判断も相当ではないとして、事案に応じた個別具体的な判断を行ったものである。
頚椎MRI画像鑑定どおりの認定はなかったが、この鑑定も裁判所を動かしつつある過渡期の状況なので、あきらめず提出していく方が良いものと思われる。
また、静岡自賠責調査事務所の判断も裁判により変更されることもあることを指摘しておきたい。
以上