(2015年6月4日解決)
依頼者A(満34歳の主婦)は、自家用普通乗用自動車を運転して走行していたところ、前方の信号機が赤色を表示したので前車に続いて停車しました。
そうしたところ、B運転の自家用普通乗用自動車がA運転の車両に追突し、Aが頚椎捻挫、両肩関節挫傷の傷害を負ってしまいました。
Aはパートタイマーとしての仕事は続け、そのあいまに治療を受けていました。
6か月後に治療を終了しましたが、Aには頚部から両肩甲部にかけての疼痛が残存し、天候の悪化した日には頭痛も発生しました
Aは当事務所に相談し、C整形外科から後遺障害診断書を入手し、静岡自賠責損害調査事務所に被害者請求をしました。
しかしながら、その判断結果は後遺障害非該当ということであったので、AはBを被告として静岡地方裁判所に損害賠償の訴を提起しました。
Bの加入していたD損害保険会社は、本件追突事故は軽微で、Aの車両の修理代も9万円とたいした額でなく、Aには後遺障害は発生しないはずであると主張しました。
Aは鑑定の申立てをしましたが、Bの代理人の反対もなく、幸い本件を担当した裁判官も鑑定を嫌うことはなく、A申出の鑑定が採用されました。
鑑定人にはE総合病院整形外科のF医師が採用され、「画像上は顕著な外傷性変化はないが、軟部組織の損傷を否定することもできず、局部に神経症状を残すとはいえる。」旨の鑑定意見を出し、Aの後遺障害は第14級9号だとしました。
裁判官は、この見解を受け入れ、BがAに対し、既払金の他に310万円の損害賠償金を支払えとの和解案を提示しました。
A、B双方とも、この和解案を受諾し、訴訟上の和解が成立しました。
本件では、Aは信頼する整形外科医院に通院し、そこで一貫して頚部から両肩甲部の疼痛を訴えていたため、症状の一貫性について、鑑定医も疑うことができなかったもので、鑑定医の考えが重きをなした事案です。
Aが弁護士特約付保険に加入していたため訴訟を提起し、鑑定費用も負担できたものであり、そうでなければ、後遺障害非該当としてD損保との間に示談をせざるを得なかったものと思われます。
最近、鑑定を採用しない裁判官が普通になっていることに鑑みると、本件は、裁判官の判断により救われた事例であると思います