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静岡市葵区鷹匠1丁目5番1号
NEUEZEIT(ノイエツアイト)4階
2015年4月5日に東京で開催された株式会社船井総合研究所主催の「交通事故分科会」、頭部外傷篇の講師として大橋昭夫弁護士が招かれ、第4講座を担当しました。
当日の株式会社船井総合研究所主催による交通事故セミナーには、全国各地から被害者救済のために努力している気鋭の弁護士が多数参加し盛況でした。
大橋弁護士は、被害者救済の意気に燃えたやる気のある弁護士の前で、高次脳機能障害被害者救済のために被害者側弁護士がどのようなことをしなければならないかとの観点から実務処理上の問題を数点お話ししました。
参加者の皆さんには熱心に聞いていただき、被害者の救済に取り組む多数の後継者が育っていることに意を強くしました。
この日のお話しの内容は、主催者の権利に属することもあり、当ホームページにそのまま掲載することはできませんが、常日頃、考えている重要なことを高次脳機能障害被害者、及びご家族の皆様に開示しまして、この日のお話しの一端をお伝えします。
当事務所では、現在、高次脳機能障害事案を多数取り扱っていますが、当初から第5級2号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの)と判断されれば、私たち被害者側弁護士にとって、法的処理は、それ程難しくはありません。
もっとも、このような場合でも、損害保険会社は、被害者が外見上、一応自立した生活をしていることをとらえ、将来介護費(見守りや声かけの費用)を提示することはまずなく、この点をめぐって訴訟で
解決しなければなりませんが、この分野の判例は数多くあり、仕事や、日常生活において、どのようなことができ、どのようなことができないかを、陳述書等で、きめ細かく立証すれば被害者の請求は認められるものと思います。
ただ、高次脳機能障害事案処理で難しいことは、被害者の外見が、通常人と同じで、周囲や、時には医師にまで、通常の生活に戻ったと思われることです。本来、第5級2号に該当する事案が、第7級4号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの)に認定されたり、もっと、それ以下の第9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)や最悪の場合には後遺障害非該当になることです。
このようにならないために、弁護士が交通事故発生当初から、高次脳機能障害を有する被害者からの相談に応じ、適切なアドバイスをする必要があるものと思いますし、ご家族の皆様も安心して私たち被害者の側に立つ弁護士にご相談下さい。
日弁連交通事故相談センター東京支部編の「民事交通事故訴訟損害賠償算定基準」(赤い本)2015年版の別冊は、「脳外傷による高次脳機能障害事案の相談における留意点」を掲載していますが、これは基礎的なものとして一読しておく必要があります。
赤い本でも触れられていますが、脳外傷による高次脳機能障害が発症、残存したかを判断する重要な要素は、意識障害の有無とその程度、画像所見、因果関係の判定(他の疾患との識別)の3点だとされていますが、これが何よりも重要です。
各地にある自賠責損害調査事務所は、この点を重視し、調査にあたっていますので、私たちもこの点に留意し、相談の当初からこの要素を満足させる医証を過不足なく集めるよう努力したいと考えています。
特に、医師の作成する「神経系統の障害に関する医学的意見」「頭部外傷後の意識障害についての所見」は損害調査にあたり、最も重視されるもので、被害の実態に合致した内容が適切に記載されるようにお願いしなければなりません。
そして、被害者家族の作成する「日常生活状況報告」も大切なもので、家族が被害者の状況を少しでもよく思いたいという見地から作成しますと後遺障害等級認定にあたってはマイナス要因になることもあります。
全国各地にある自賠責損害調査事務所は、この書面を検討し、医師の所見と矛盾があれば、マイナス要素として検討し、低い等級を認定する傾向があります。
このことは、私たちの事務所が過去に取り扱った裁判事例を検討するだけでもよくわかります。
ある事例では将来の介護費が認められたが、ある事例では認められていないことがあります。
担当裁判官の感性によることも大きいのですが、やはり、私たちが被害実態を明確にし、どれだけ裁判官を説得できたかが重要ではないかと思いますし、それに尽きると思います。
特に裁判官の多くの方は、損害保険会社が運営資金の一部を負担している損害保険料率算出機構自賠責損害調査事務所の判断した後遺障害等級が公正なものであるとの認識を有しています。
決して自賠責損害調査事務所が被害者に厳しい調査機関であると思っているわけではないのです。
この考え方を突き崩すことは容易でなく、このことが私たち被害者側弁護士にとって最大の悩みです。
ある事例はある事例の被害者と同等か、それ以上の被害を負っているものであると私たちも思うのですが、自賠責損害調査事務所は、わずかな医証の不足をついて、高次脳機能障害を認定しないこともあります。
ある事例の被害者が通院した医院の医師も、ある大学医学部の講師を務めた立派な経歴を有した脳神経外科医でありますが、その医師が内容の充実した医学的意見を出しても、自賠責損害調査事務所は「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実についての報告書」(2011年3月報告書)等によって、高次脳機能障害の有無を認定しているため、その処理が極めてマニュアル化され、少しでもそれに該当しないところがあると、高次脳機能障害を認定しない傾向があります。
2011年3月報告書は、高次脳機能障害の疑いがある被害者を1人でももらさないという趣旨から自賠責保険(共済)高次脳機能審査会において審査する事案を拡大化して改訂をしていますが、それでも改訂前の5条件は今でも重要視されていることに特に留意しなければなりません。
5条件とは次のアないしエの内容です。
ア | 初診時に頭部外傷の診断があり、頭部外傷後の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:JCS(ジャパンコーマスケール)が3桁、GCS(グラスゴーコーマスケール)が8点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘症あるいは軽度意識障害(JCSが2桁~1桁、GCSが13~14点)が少なくとも1週間以上続いた症例 |
イ | 経過の診断書または後遺障害診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷等の診断がなされている症例 |
ウ |
経過の診断書または後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する具体的な症状、あるいは失調性歩行、痙性片麻痺など高次脳機能障害に伴いやすい神経徴候が認められる症例、さらには知能検査など各種神経心理学的検査が施行されている症例。
具体的症状として、以下のようなものが挙げられる。 記憶・記銘力障害、失見当識、知能低下、判断力低下、注意力低下、性格変化、易怒性、感情易変、多弁、攻撃性、暴言・暴力、幼稚性、病的嫉妬、被害妄想、意欲低下 |
エ | 頭部画像上、初診時の脳外傷が明らかで、少なくとも3か月以内に脳室拡大・脳萎縮が確認される症例 |
オ | その他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例 |
この5条件に1つでも外れれば、高次脳機能障害がないと考える必要はありませんが、それでも自賠責損害調査事務所が上記の条件を金科玉条として調査している限りは、私たち被害者側弁護士もこれを無視するわけにはいきません。
どこの病院でも、脳外傷患者にはCT、MRI等の画像を撮影しているとは思いますが、これらの画像が万一ないと、主治医が脳挫傷との診断をしても、画像上、頭部外傷が認められないとして、エの条件を満たさず、高次脳機能障害として自賠責保険上では認定がされないことになります。
特に、脳外傷分野ではむち打ち事案と異なり、MRIよりもCTスキャンの情報量の方が多いようですから、この点はしっかりと覚えておいて下さい。
CTやMRIを初診時の病院で撮影してあれば、たとえ、主治医が脳挫傷等を見逃がしたとしても、後から画像診断で放射線診断専門医がそれを見つけることも多いようです。
何日もたってCTやMRIを撮影しても、その時点で脳挫傷のあとが消えてしまうこともあるとのことですから、初診時の撮影が何よりも重要です。
このように、画像が何よりも重要ですので、この入手につきましては万全を期す必要があります。
又、当初、意識障害があったか、意識が清明であったかも、特に重要視されていますので、主治医がこの点を見落としていれば、ご家族の方が、この点を指摘する必要があります。
グラスゴーコーマスケール(GCS)やジャパンコーマスケール(JCS)の点数も大事になりますので、万一、医師がこのような検査をしていないのであれば、やってもらうように伝える必要があります。
夜間の救急外来には、脳神経外科医がおらず、若い研修医が治療を担当することもありますので、この点はご注意下さい。
そして、病院にすぐに申し出て、経験の豊富な脳神経外科医の診察を求めることにしましょう。
頭部外傷を負って、初め重篤でないと外見上思われても、その後、重症化することも多々あるようですので、病院に遠慮する必要はないものと思われます。
その後の神経心理検査の内容も高次脳機能障害が認定される上で重要なものですから、被害者のご家族が適正に検査されるよう見守る必要があるかと思います。
いずれにしましても、高次脳機能障害の症状があるかもしれないと思ったら、ご家族の皆様が、私たち被害者側弁護士に早期に相談することに尽きます。
私たちの事務所は、高次脳機能障害の事例につきまして、日々研鑽に努め、判例は勿論のこと、医学的知識の向上も図っていますので何なりとご相談下さい。
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